セイのおはなし

 眠れない夜には想い人を心に描く。こちらに向けて微笑む時の、少し潤んだような輝く瞳、風に揺れる柔らかな髪、それにしなやかな細く長い手足――。
 愛しくて愛しくて、ずっと守っていきたい。誰にも渡したくないし、傷つけたくない。嫌われたくなくて、ずっとずっと――側に居たくて。
 特別な存在になりたくて。
 彼の事を思うだけで心臓が高鳴り、夜は深みを増していく。
「んっ……」
 悶々と、身体の熱も増していく。
 露出した下半身が柔らかく肌触りの良い寝具に触れた。
 暗闇の中、描く想い人の肢体は艶やかに美しく、セイは漆黒の髪を揺らして情欲を纏う。
 己の下腹に手を伸ばし、筒状にした手のひらで熱を持ち始めたそれを包み込んだ。
 嫌われたくない、傷つけたくない、とその思いは確かなはずなのに、時には乱暴に自分のものにしたくなってしまうのは何故だろうか。
「トバ……リ……」
 熱い吐息を吐き、本能の赴くままにペニスを扱いていく。
 無垢なトバリの口に咥えられたい、いつもいつも表情豊かなあの口に性器を突っ込み、熱い粘膜に包まれて少し乱暴なくらいに動いてみたい。
 望む期待を与えられたペニスはいつしか天を突き、快感を貪ろうとしていた。己の手をトバリの口に見立てて、妄想と現実の狭間で快楽を得る。
 誰にも言えない自分だけの夜の秘密だった。
 逃げられないように捕まえてから喉の奥まで犯して、泣いて嫌がっては苦しげに歪むトバリの顔を――見てみたい。
 セイの想像の中のトバリは口いっぱいに性器を頬張り、唾液で顔を濡らして切なげに呻くのだ。セイのペニスの先端からは熱い蜜液が漏れだしていた。
 その蜜液を手に取り、ペニスに広げ絡めるように塗り込めていく。すると、ペニスを扱きあげるたびにぐちゅり、と濡れた音が漏れ始めた。
 月の明かりだけがセイの淫情を照らし、遠くから聞こえる木々の囀りと、混ざる濡れた音が耳を刺激し、僅かな罪悪感を誘う。
 胸についた桃色の突起を舌で舐り、指先で捏ねて、転がして、摘んで、そしてそうされている間のトバリの表情を余す事なく観察したい。
 眉を寄せて下唇を噛み締め、初めての感覚に頬を赤く染めて髪を振り乱す。そうして悶えるトバリに、極上の快楽を与えたかった。
 白い足の間を割り、奥の秘められた孔を暴いてみたい。まだ何も知らないその孔を押し開き、蠕動する肉に包まれたい。
 四つん這いにさせて、後ろから思うままに動いてみたい。細い腰を掴んで、その腰が壊れてしまうくらいに激しく、自分のためだけのセックスがしてみたい。
 力任せに揺さぶって、トバリの一番感じる場所を突き上げて、トバリのプライドなんてものは全て踏みにじってしまいたかった。無理矢理にでも感じさせて、感じすぎて泣いてしまうくらいの歓びを与えたかった。
 後ろから突き上げる度にトバリの背は快楽に蠢き、セイを煽る。苦痛の声はいつしか悦楽の証に変わり、妖艶に啼く。
 自ら大きく開かれた足の間はぱっくりと充血した肉を見せつける。その肉にはセイの出した白い液体が纏っていた。
 時にはトバリを抱え、背面座位の体勢で犯してみたい。
 敏感な背筋に舌を這わせ、その度に自分を包んだ内壁がびくびくと締め付けを強める。その締め付けられた瞬間を狙って、性器と化した肉を割り込んで突きあげたい。
 トバリのペニスにも手を回してそちらも刺激する。
 前と後ろからの快感に、もういやだ、と言われても、そのまま抑えつけて犯していたい。逃げ惑う腰の揺らめきで自分を追い詰めるトバリを嗤って、滑らかな肌に口付けをしたい。
「うっ……んぁ……」
 それを想像するだけで――心臓が早鐘を打ち、絶頂は間近になっていた。
 手の動きを一層早め、もう目前に見えた絶頂を目指す。痺れるような快感が股間から足先へと流れる。
「トバリっ……!」
 絶頂のその瞬間、愛しい想い人の名を呼びながら、セイは快楽の液体を全て吐き出す。放出されたその液体はティッシュの中へと全て吸い込まれていった。
 まだ荒ぶったままの吐息で、セイは身体の力を抜いた。快感の余韻で身体が気怠く、頭はぼんやりと、けれど意識だけは明確で、月明かりが眩しかった。
 風が吹き、木々のざわめきが部屋に運ばれる。
 トバリの事をそういう風に見ているなんて、トバリに知られたくなくて――そんな事を思ってしまっている自分が少しだけ恥ずかしかった。

 セイとトバリが再開して間もない頃の話しだった。



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